企画展示「大森文庫からみた華岡流医術とその地方伝搬」を開催しました

2019年11月29日

 附属図書館では、2019年10月29日(火)~11月13日(水)まで医学図書館収蔵の貴重資料展示会「大森文庫からみた華岡流医術とその地方伝播」を開催しました。この展示会は、江戸時代後期の医家修業を通して見た華岡流医術の実態と、地元島根で行われた医療について紹介するもので、期間中の入場者は420名でした。

【展示会場の様子】
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 10月31日(木) 14:00~15:00にギャラリートークを開催し、今回の展示会の監修をしていただいた公益財団法人いづも財団事務局次長(元島根大学医学部特任教授)の梶谷光弘先生に、展示史料とパネルの解説をしていただきました。

【ギャラリートークの様子】
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 「大森文庫」は、1804年、曼荼羅華(まんだらげ)、烏頭(うず)などによる「麻沸散(まふつさん)」による全身麻酔で乳癌手術を成功させた華岡青洲(1760年‐1835年)一門に、大森泰輔・加善・六四郎と三代にわたって学び、地元母里藩大塚(現・島根県安来市)で開業した大森家の旧蔵史料で、古医書610冊、掛軸・書付等15点からなるコレクションです。これらは、まとまった著述を残さなかった華岡流医術・薬方に係る史料群というだけでなく、華岡流医術の地方伝播と医学教育、地域医療を内容とする史料としても貴重なものです。今回の展示会では、50点余りを紹介しました。
 中でも大森泰輔(1771年‐1857年)が、1834年に華岡青洲の医学塾「春林軒(しゅんりんけん)」での修業中に記した日記「南遊雑記(なんゆうざっき)」からは、華岡家の実情や、青洲や他の門人達から学んだ華岡流外科の神髄を伺い知ることができます。また、華岡家秘書と言われている、「春林軒膏方便覧」「青洲先生金瘡口授」「青洲先生医談」「南涯青洲険症百問」「鹿城医談」「燈下医談」などの筆写本をはじめ、当時の医学書を写したものが多数残されています。
 一方、泰輔の娘婿加善(1812年‐1881年)は1836年に青洲一族が大阪で経営していた医学塾「合水堂(がっすいどう)」の塾頭に抜擢され、2年の滞在中に多数の外科手術に臨んでいます。初めて行った乳岩再発手術の「大患」や「奇患」など、20の症例を「奇患並大患図」として記録しています。帰国後は「麻沸湯」を用いた乳癌手術等を行い、地元に医学塾「奇正軒」を開き医師の養成にも尽力しました。
 華岡家の医学塾には全国から2000名を超える入門者がいましたが、出雲国(松江・広瀬・母里藩)からは、乳岩手術の成功から5年後の1809年に広瀬から高橋以忠が入門して以来、青洲の存命中に16名、没後に21名の計37名、石見国に27名、隠岐国に3名がいました。大森文庫史料からは、江戸時代後期の医師たちが「患者を治したい」という強い意志を持ち「最新の薬方・医療技術の習得」に向け、精力的かつ真摯な態度で学んでいることが伝わってきます。
 また、10月はピンクリボン月間でもありました。この展示会がきっかけとなり、乳がんのこと、患者さんやそのご家族への理解が深まることを願っています。 

*「大森文庫」史料の一部は島根大学附属図書館デジタルアーカイブ で、閲覧・ダウンロードできますので、どうぞご利用ください。

https://da.lib.shimane-u.ac.jp/content/ja/search?collection_name=%E5%A4%A7%E6%A3%AE%E6%96%87%E5%BA%AB

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